心肺蘇生・救命スキル、ステップアップのヒント

いろいろな団体がいろいろな救急法/心肺蘇生法のコースを開催していて、いったいどこが違うの? という疑問が生じるのは当然だと思います。

そこで独断で恐縮ですが、おおざっぱに日本で代表的な心肺蘇生トレーニングプログラムをランク分けしてみました。

初級:
普通救命講習(消防)、救急法基礎講習(日赤)

中級:
上級救命講習(消防)、メディックファーストエイドBasic(MFA)、ハートセイバーAED(AHA)

上級:
救急法救急員(日赤)、ハートセイバー・ファーストエイド(AHA)

ここまでは、一般市民向けのコースです。

この上に、医療従事者などプロフェッショナル向けの心肺蘇生プログラムが入ってきます。

プロ向け初級:ICLS(日本救急医学会)

プロ向け中級:BLS for Healthcare Provider(AHA)

プロ向け上級:ACLS Provider(AHA)、PALS Provider(AHA)




◆ 医療従事者は最初からプロ向けの心肺蘇生法プログラムを!

市民向け心肺蘇生コースとプロフェッショナル向けコースでは、明確な線引きがあって、決して延長線上でつながっているものではありません。市民が市民向けコースから順繰りにステップアップしていくのはよいことだと思いますが、医師や看護師、救急救命士といった医療従事者であれば最初からいきなりプロ向けのコースを受講することを私はお薦めしています。

実は、日本にプロフェッショナルのための心肺蘇生法講習が取り入れられたのはたかだか5-6年前からの話です。それ以前から日本にあったのはすべて市民向けのコースで、医療従事者もその延長で考えられていました。

しかし市民向けコースは、善意に基づく行為を前提としているのに対して、医療従事者や心肺蘇生を義務として行なう職業の人にとって、心肺蘇生は職業行為です。ここが大きく違う部分で、善意であるならある意味何をやっても緊急避難で免責されますが、もともと蘇生行為が想定されている人の場合は、一定の責任と注意義務が課される点に注意が必要です。

市民向け講習にはそうした視点が一切含まれていません。そのため、プロはプロ向けの講習を受けるべき、と私は考えています。

具体的な例を挙げますと、例えば人工呼吸の問題があります。市民向け蘇生講習では口対口人工呼吸が標準です。というよりそれ以外の方法は一切教えていないのが現状かと思います。しかし病院勤務の医師や看護師が仕事場で口対口の人工呼吸をするかと言えば、それはほぼあり得ないでしょう。

医療現場ではスタンダード・プリコーション(標準感染予防策)が大前提になりますので、患者の唾液に直接触れるような行為は原則的に行ないません。それは救助者自身を守るためでもありますし、相手(患者)のためでもあります。

職業としてCPRを提供する以上、第一選択は人工呼吸具であるバックマスクですし、それがなければポケットマスク。そして最後にフェイスシールド等を使った口対口です。

成人でもっとも多いと言われている突然の心停止であれば、人工呼吸を急ぐ必要はぜんぜんないわけで、慌てて傷病者に直に口を付けてしまったら、それはある意味、プロとしてはどうかなとも思います。

善意で行なうCPRであれば、その場の勢いで見ず知らずの人に口対口人工呼吸を行なうことは勇気ある行動として称えられるかも知れませんが、医療従事者の場合は別です。

ということで医療従事者にとっては口対口人工呼吸は、極力避けなければならないもの。よってそれ以外の人工呼吸法のトレーニングが重要になってきます。

そこで医療従事者には医療従事者向けの救命講習を受けるべき、と私は考えています。

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